高齢者在宅医療についての研究発表をおこないます。
平成30年1月14日(日)ポスター発表P-62、口頭発表O-5
高齢者の在宅医療への服薬支援や服薬支援機器開発等について、多くの薬剤師の先生方と議論を深める有意義な1日にしたいと思います。会場でお会いしましょう!
~Abstract~
ポスター発表P-62
【演題名】
薬局が地域包括ケアシステムの中核になる為に必要なIoT、ICT、robotについての考察
【目的】
先に我々が行った研究において、服薬介護には莫大な介護者負担や社会的コストが費やされている事がわかった。今後薬局が地域包括ケアシステムの中核となって行くには、まずは薬剤師の使命としての服薬介護の問題を解決しなければならない。
服薬介護の問題を解決しようとする場合、IoT、ICT、robot等の使用が考えられ、既に、数々の服薬介護周辺の機器が開発されている。しかし、薬剤師視点の機器でないと実際の服薬介護に支障がある場合や、薬剤師の手間が多くかかってしまう場合などがある。
そこで、服薬介護周辺のIoT、ICT、robot等の機器に関して、薬剤師の視点で考案、考察を行った。
【方法】
1.既に販売されている服薬介護周辺の機器の調査を行う。
2.特許検索システムを用い、既に考案されている服薬介護周辺の機器の調査を行う。
3.1.2.において、薬剤師視点から見た場合に、問題が生じそうな物、手数がかかりそうな物について、ブレインストーミング等で、新たな機器を考案する。
4.3において特許になりそうなものに関しては特許申請を行う。
5.3において製品化の算段を行う。
【結果】
1:従来の問題点を解決する服薬支援robotを考案。
①一連の分包品をワンタッチでセット。
②服薬時に自動で薬を排出し、同時に生体反応を収集。
③分包品を自動で開封し、飲み口を落薬しにくい形状に加工。
④嚥下補助ゼリーと服用薬との混合や、簡易懸濁を自動で行う。
2:さらに、服薬支援ロボットをネットワークに接続し、ICT端末としての機能を考案。
①お知らせや見守り機能により服用時点が守れ、飲み忘れや取り違い、過剰服用をした場合の即時の対応が出来る。
②外部チャット、AI会話等のコミュニケーション機能で、認知能の低下を防ぐ。
③大規模災害時等の連絡網として用いる事が出来る。
3:地域包括ケアシステムにおける、地域情報取得ICTの考案。
①現在の薬局周辺の地域情報特性を収集するシステム。
②未来の薬局周辺の地域情報特性を予測するシステム。
4:特許 ①特願2017-49181 ②特願2017-49178 ③特願2017-49179
5:すべてが新しい開発の為、単一機能試作機でも、初期費用2-300万円必要。
【考察】
・服薬介護を支援する機器の開発に薬剤師の視点を入れる事で、介護業務はもとより薬局業務の負担軽減の観点を入れることが出来る。
・新たな服薬支援ロボットを開発する事は、多くの患者と介護者を救うことになり、最終的には薬局も救われる。
・服薬支援ロボットの開発には莫大な資金が必要で、賛同する多くの仲間を集める必要がある。
口頭発表O-5
【演題名】
居宅高齢者の服薬困難の実態及び係るコストの算出と薬剤師が貢献できる服薬困難者への服薬支援の可能性の検討(第二報)
【目的】
薬剤師の服薬困難高齢者への服薬支援は、一包化・粉砕調剤等、何十年来革新のない現状において、新たな選択肢となり得る薬学的かつ医療経済学的解決策の立案を目的とした研究を行い、その成果を第50回日本薬剤師会学術大会において一部発表した。今回は未発表分の居宅療養高齢者への服薬介護に係るコストと薬剤師が貢献できる服薬困難者への服薬支援の可能性の詳細について発表する。
【方法】
(1) 介護事業所(株式会社ベストライフ)経営陣に服薬介護についての聞き取り調査
(2) (1) を分析し、同事業所介護職員への調査用アンケート(無記名)を作成
(3) (2) を用いて、同事業所(神奈川県下32施設と町田市3施設)において、居宅療養高齢者の「服薬困難」の実態調査と、服薬介護の内容と介護者のコストの解析を行う
(4) 「服薬困難」の服薬介護に係る社会的コストを削減し得る服薬支援策の提案を目的とする研究を行う
【結果】
(1) 高齢者の服薬困難は、疾病由来の嚥下困難や拒薬の患者の問題、ポリファーマシーの医療問題、介護分野のICT化の遅れの社会問題等、複数の因子が複雑に絡み合っている
(2) 介護者の服薬介護に係る時間は1日平均88.2分(有効回答者132名)だった。服薬介護の内容は、服薬管理、服薬支援、情報管理と多岐に渡っていた
(3) (1)(2)の解決のための服薬支援策を考察した
【考察】
・服薬介護に莫大なコストが係っており、患者のみならず介護者に対しても、薬剤師の支援が必要である
・薬剤師が医師に処方提案を行う場合、服薬介護負担軽減という視点からも行う必要があり、それを医療・介護業界のコンセンサスにしていく必要がある
・服薬困難へ多様な支援策が無い現状を放置すれば、服薬介護の手間が増大する恐れがあり、服薬介護に係る社会的コストを削減する、人的資源に依存しない機器等の開発・普及が急がれる
・研究開発に薬剤師の視点が欠落すると、薬局業務負担が増える恐れがあるので、薬剤師も積極的に研究開発に携わる必要がある